腎臓に優しいドッグフードの選び方

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犬の腎疾患は、死亡原因の上位を占めていて、シニアになると多かれ少なかれ機能の衰えが出てくる臓器です。腎臓の機能が衰えてきたわんちゃんにとってどのようなフードを選べばよいのか、腎臓のケアを考えたドッグフードの選び方について解説します。病気の治癒を目的としたものではございませんので、その点ご留意下さい。

腎臓の機能

腎臓は、血液の中の体にとって不要な成分をろ過、排出し、尿を生成する臓器です。腎臓を構成する主要な組織(ネフロン)は、一度破壊されると修復は難しいとされており、ネフロンの損傷により腎臓の機能が低下した場合には、その損傷をこれ以上拡大させないようにすることが重要となります。

腎疾患に対応するドッグフード

リンの摂取を制限する(低リン食)

人及び犬の研究において、リンを制限することは損傷した腎臓のさらなる損傷を抑える効果があるとされています。成犬期(維持)のAAFCOが定めるリンの最低含有率は0.4%(乾物値換算、2018年11月現在)とされているので、重篤な腎疾患を持っていない限りは、この数値以上でかつ低めのフードを選ぶ必要があります。私が目安としているのは、0.4%以上1.0%以下です。

また、リンを公表していないケースが多くありますが、その場合には灰分がリンの配合率を推定する助けになります。8.0%以上の灰分を含みミールが主原料のフードは、ミールに骨が多く含まれており、その結果リンが多く含んでいる可能性が高いと推察されます。

ミールを使用しているフードの大半は、肉骨粉を使用しており、骨はリンを多く含みます。そのため、肉骨粉のミールを使用しているフードは、リンが高くなる傾向にあるため、生肉(正肉)を使用しているフードをおすすめ致します。

低リン食が機能が低下した腎臓の保護に効果があることはほぼ疑いの余地がなく、ドッグフードを選ぶ上でもっとも優先的に考える必要があります。

一方で、健康な腎臓の状態でリンを制限することは、腎臓の保護に役立つかどうかははっきりしていません。

EPA(エイコサペンタエン酸)を摂取する

犬の研究では、EPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む魚油(メンハーデン由来)の摂取で、慢性腎不全の犬の糸球体濾過量(GFR)が維持され、牛脂またはベニバナ油(両者ともオメガ6脂肪酸が豊富)を摂取すると、糸球体濾過量(GFR)が進行性に低下するという結果があるため、EPAを多く含む魚油等の摂取は、損傷した腎機能の保護に繋がると考えられます。慢性腎不全の犬における最適なオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の比率は不明ですが、推奨としてオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の比率5:1以下、食餌摂取量100kcalあたり0.5~1.0gのオメガ3脂肪酸の摂取が示されています。一般的なドッグフードでこの推奨量を摂取することは難しく、この推奨を満たすためには別途魚油やクリルオイル、サーモンオイル等の添加が必要となります。
参考文献犬および猫の慢性腎不全の栄養管理(2004年7巻Supplement号 p.41-46)
参考文献Natural Health Bible for Dogs & Cats

カリウムの過度な摂取を控える(低カリウム)

腎臓の機能が衰えた状態で、カリウムを大量に摂取すると、ろ過が追いつかずに高カリウム血症を発症する場合があります。通常の総合栄養食を与えている場合にはこのケースは考えづらいですが、重篤な腎疾患の場合には、カリウムを制限をする必要があります。

高ナトリウムを避ける

腎臓の機能が衰えた状態で、ナトリウムを大量に摂取すると、ろ過が追いつかずに血圧が上昇する場合(高血圧)があります。通常の総合栄養食を与えている場合にはこのケースは考えづらいですが、重篤な腎疾患の場合には、ナトリウムを制限をする必要があります。特に、塩分が多く含まれている人用お菓子などは与えることを控える必要があります。

タンパク質

人の研究において、タンパク質量を制限することは損傷した腎臓の保護につながるとされています。犬については、はっきり言えない点がありますが、個人的な意見として、30%以上の高タンパクフードを積極的に取る必要はないのではと考えています。一方であまりに低い(タンパク質18%以下)フードの場合には、タンパク質の不足による健康への影響が懸念されます。総合的に考えてやや低めのタンパク質率のフードがおすすめです。低~中程度の腎疾患の場合には、20~25%程度を私は推奨します。

また、消化吸収の良いタンパク源使用しているものを優先的に選ぶ必要があります。消化吸収の良し悪しを判断する指標の一つとして、生物価があります。小麦や大豆、コーンの生物価は低く、鶏肉を始めとした動物性タンパク質は生物価が高い傾向にありますので、主タンパク質源が動物性のフードを選択するほうが良いかと思います。ただ、生物価の低いタンパク質でも組み合わせることで栄養価を改善することが出来るので、ひとつひとつの原材料だけではなくそれぞれの組み合わせまで考える必要があります。原材料表のみから、どれだけタンパク質の栄養価が改善されているのかを判断することは難しいのですが、タンパク質が原材料表の上位に小麦、大豆(副産物のおからを含む)、コーン、小麦グルテン、コーングルテン、大豆たんぱくなどが並んでいる場合には、避けるのも一つの手かと思います。

タンパク質摂取の腎臓に与える影響や生物価については議論の余地があり、はっきりとした研究結果も見つからないため、タンパク質の摂取についての選定は推奨程度に留まります。

まとめ

腎臓の機能に衰えが見られた場合には、早めの対応が必要です。ドッグフードも様々な種類があり、嗜好性や食物アレルギーの有無などで、腎臓が衰えたわんちゃんにとって最適な餌は異なるため、探しきれない場合等ございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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この記事の筆者

吉武 雄史UGpet Inc. 代表取締役社長

小学校の卒業文集に「ペットショップの店長になりたい」と夢を記し、20歳となり1年間アルバイトをして貯めた資金を元手として、明治大学在学中にUGペットを創業。現代表取締役社長を務める。愛犬はトイ・プードルのくるみとミニチュアダックスフントのビビ。ZENペットフードの開発者です。

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